高村薫さん・五條瑛さん・福井晴敏さん・古処誠二さん等の小説、海外の海洋小説、歴史、B'z、を糧に生きている人間の日常。
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本★小池百合子『女子の本懐 市ヶ谷の55日』
2008年10月19日 (日) | 編集 |
本★小池百合子『女子の本懐 市ヶ谷の55日』(文春文庫)2007.10.20

著書が防衛大臣を務めた55日間が日記風に書かれています。
とかく権力闘争しかしていないように見える霞ヶ関ですが、
(防衛省だけは市ヶ谷で離れているけれども)
在任は2ヶ月に満たない期間でも、大臣の2ヶ月というのは
非常に濃密なのだなと思いました。

“(ワシントンでの)破格の待遇は、プラス、マイナスだろう。
 日米関係の強化にはプラス、嫉妬の世界である永田町ではマイナスだろうか。
 女ヘンの二文字「嫉妬」を男ヘンに変えてほしい。(147ページ)”

は、言い得て妙と。
山本博文さんの『男の嫉妬 武士道の論理と心理』(ちくま新書)や
山内 昌之さん『嫉妬の世界史』(新潮新書)にもある通り、
男性が嫉妬深いのは明白! 生存競争そのものが嫉妬の温床ですが。


非婚・未婚の増加、少子化の問題で、著者の小池氏は、政策的な努力の積み重ねは
進んでいると認めながら、“でも、何かが、違う。”と書かれていることに共感。

産みたいけれど経済的な理由から産めないという人にとっては、
政府が進める子育て支援で対応できるだろうと思う。
高齢化社会になり、介護しないといけない場合は出産どころではない、
という人もいるでしょう。その場合は介護支援、子育て支援の複合。
ただ、結婚しない、子どもを産まない理由は人それぞれで、
環境が整ったから結婚するとか、産むというものでもないと思う。

雑誌「Domani」(購読者の対象が“30代の働く女性”)を読んでいたら、
家計簿のモデルケースとして、3家族が挙げられていました。
中に、夫婦揃って月収各45万円(2人で90万円)の人が
「でも子どもが1人なので老後が不安」と悩みを語っていました。
・・・どこに不安が?! 私もひとりっ子ですが!
しかも女性の皆さん、そんなに高収入なのに9時~18時くらいの
就業時間で、残業は一切なしだそうな。旦那さんも、社の方針で残業がないとか。
どこに不安が!(←くどい)

どの程度の経済状態で子どもを産む気になるのかというのは、人それぞれですね。
人間というのは、不安を糧にして前進する生き物なのでしょう。
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本:サビーネ・フリューシュトュック著、花田知恵・訳『不安な兵士たち ニッポン自/衛/隊研究』
2008年08月06日 (水) | 編集 |
本:サビーネ・フリューシュトュック著、花田知恵・訳
  『不安な兵士たち ニッポン自/衛/隊研究』(原書房)2008.3.26
著者はオーストリア人の女性社会学者。
一般向けの読み物というよりは、論文の体裁に近いと思います。
駐屯地での1週間の参与観察と、厖大なインタビューと、
広報誌や一般雑誌などから得た知識により、論が展開されます。

駐屯地で座りながら話した、というのは臨場感が溢れているなぁと思います。
見学に行くと、胡座をかいて話している隊員さん達をよく見かけるし、
たまにそれが良い雰囲気のカップルだったりすると、微笑ましい光景です。

でもジェンダーの問題は考えたことがなかったなぁ。
艦見学に行くと、女性はお風呂とかトイレとか少ないから大変だろうなぁと思うし、
幹部なら1年毎に転勤だから、結婚は難しいだろうなと思うし
(男性が主夫になってくれれば別)、
訓練だからと夜中に急に起こされたら、お化粧とかどうするんだろうと思うけれど。

わたしは、日本の自/衛/官が不安定な位置づけをされていることを、
むしろ魅力に感じます。
正当に評価されないことは、つらいことでしょうが。
でも、肩で風を切って歩けるような権力を持った傲慢な軍人ほど、
鼻持ちならなくて、恐いものはない。
“不安な兵士”だから、その胸の内を聞いてみたいし、
仕事に対する真摯な態度や、ピンと伸びた背筋を見て、
かっこいいなぁと思うのです。

部外者だから言える、身勝手な意見ですけれども・・・

本:田原 総一朗&田中森一『検察を支配する「悪魔」』
2008年07月25日 (金) | 編集 |
本:田原 総一朗&田中森一『検察を支配する「悪魔」』(講談社)2007.12.06

最近、田中森一さんの対談集を読んでいます。
(有名になった著作は未読)
なんとなく敬遠していましたが、読んでみるとやっぱり面白い。
地検特捜部でも、東京と大阪では違うのだということが、よく分かる。
(東京という大都市と、その他の地方の違いかも知れませんが)
それから“犯罪”の作り方のテクニックなども。
例えば殺人などは犯罪として分かりやすいけれども、
特捜部が扱うのは、どこからどこまでが犯罪で、
どこからどこまでが犯罪ではないのかが、分かりにくい。
検事の裁量ひとつで決まる部分もあるのですね。
こういうところの話は、一般人の感覚と乖離している部分もあって、
そうなのか、と驚くことも多い。
贈収賄では、贈ったほうと貰ったほうの時効が違うというのは初めて知りました。

検察批判は最近とても多く出て、わたしも本は読んだけれど
すべて検察が悪いとは、もちろん思っていません。
ただ検察が、必要な国策捜査をする一方で、
国民からも検察に対して、どうなんだ、という視線を向けるのは必要なのかと。
情報はたくさんあるのだけれど、その解釈は自分の頭で一度してみよう、と
思うことが大切だと。
「あいつは悪い奴だと言われているから悪い奴だ」という批判はしたくないなぁ。
でも、警戒は必要ですけどね!
真夏の夜は蒸し暑いから、後輩は窓を開けて寝ているらしいんですが、
それ防犯上やめたほうが良いのでは???
世の中、悪い人もいるよ!!!

祝★最終巻発売!
2007年07月23日 (月) | 編集 |
本★J.K.Rowling『Hally Potter and the Deathly Hallows』(BLOOMSBURY)

届いたのを持った最初に、今回は薄い!と思ったんですが、
いつも5巻を基準にしてしまうが為の錯覚でした。贔屓の引き倒し。
5巻は766ページ、6巻は607ページ。7巻も同じく607ページです。
(UKアダルトバージョンで。)

わたしにとっての最終巻は5巻だから。

Harry Potter and the Deathly Hallows (Harry Potter 7)(UK) Adult Edition Harry Potter and the Deathly Hallows (Harry Potter 7)(UK) Adult Edition
J.K. Rowling (2007/07/21)
Bloomsbury Publishing PLC

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本★五條瑛『赤い羊は肉を喰う』
2007年03月27日 (火) | 編集 |
本★五條瑛『赤い羊は肉を喰う』(幻冬舎)2007年1月25日

奇抜な印象を与えるタイトルが意味していることは、
小説の最後に明かされます。
羊は何か、それが赤いとはどういうことか、そうして、
草食動物であるはずの羊が、肉を喰うとは・・・
最初は謎だらけで、拡散していた登場人物が、少しずつ繋がり、
大団円を迎えます。それにしても、毎回こんな主役(葉山とか)で、
よくクライマックスまで持っていけるなぁと思うんですよ。
仕事や人間関係がイヤになって、放ったらかして、そこら辺の飲食店で
ぼーっとしてそうな性格の主役で。

この小説の主役は、「内田調査」という会社に勤める内田偲という三十路男性。
彼の職業は計数屋、店舗を出店する時やマンションを建てる時に、
最寄駅の利用者は男女どの世代が多いか、通行人の顔ぶれはどうかといった調査や、
選挙前の各候補の当選確率などを調べる会社です。
が、計数屋の仕事はそこまで。調べたデータを提出するだけ。
通行人に独身の20~30代女性が多い、というところまで。
だからアパレル会社を誘致すればいいとか、女性向きのカフェを経営すればいいとか
そういうことはコンサルタントがすることであって、計数屋の仕事ではないし、
さらに、特定の場所に集まった大衆の意識を操作して、流行を作り出すのはまだしも、
犯罪を誘発させるなどは、もってのほか。
それは神の所業ですが、それゆえに大衆の操作に魅かれた人々がいた、というお話です。

ちょうど直前に読んでいた本『データの罠』に絡む内容で、理解しやすく面白かったです。
わたしも、「世論」を操作させるのは嫌いだけど、操作するならこうすればいい、という
方法は思いつく。それを実行に移して成功したら、自分の仮説が正しかったという証明になる。
ただ、爆弾を作る方法を知っているからと言って爆弾を作るのかと言えば、
普通は作らないですよね。犯罪というのは、そういうものですよね。

エスターの言葉で印象的だったのは、

「人間というものは善意は己の意志によるものとし、悪意は神のせいにする。
 それが大衆なんだ。戦争に行き人を殺した人間は、それが自分の本質であったとは
 絶対に認めないだろう。時代や為政者に責任をなすりつけ、自分に責任があったとは
 口が裂けても言わない」(360ページ)


本★田村秀『データの罠 世論はこうしてつくられる』
2007年03月26日 (月) | 編集 |
本★田村秀『データの罠 世論はこうしてつくられる』(集英社新書)2006.9.20

政治家は、政策に「世論」を反映させると言い、
地検特捜部は「世論」に沿って動いていると言う。
その「世論」は、いったい誰がどこで決めているのか、疑問でした。
テレビ番組で紹介させる「都道府県ランキング」、「内閣支持率」「視聴率」
「犯罪発生率」「阪神が勝ったら○○億円の経済効果」などというものまで
ありとあらゆる数値データが氾濫していますが、どういう人々から
どういう風にデータを取ったのかが分からないので、うさんくさいとしか思えない。
テレビ番組“発掘!あるある大事典”でも、データの改竄や恣意的な解釈がなされ、
結論を歪められていたことが問題になりました。
結論を鵜呑みにするのではなく、その結論が出された過程も疑ってみないといけない。

統計を取る為のデータを集める際に、大切なのは、サンプルの数の多さではなく、
“有効回答率であり、調査の質”なのだそうです。(26ページ)
有効回答率というのは、普段あまり考えていませんでしたが、
確かに、回答率20%と90%では、それを聞いただけで、受ける印象も違ってきます。
回答率が少ないのには理由があるはずで、それだけ多くの人間が回答を拒否したという
その質問には、どういう問題点があったのかを考えないといけない。

それに、回答方法の違いも回答率のみならず、回答そのものに影響します。
例えば、「いまの生活にどの程度満足していますか」という質問に対し、
郵送法での有効回答率は71%で、「満足・まあ満足」が43%だったそうです。
ところが、面接法での有効回答率は59%で、
同じ質問に対し、「満足・まあ満足」と答えた人は、66%。(36ページ)

これは、個別訪問で他人が玄関先に来てアンケートに協力するかどうかと、
他人から面と向かって生活満足度調査をされて、否定的な回答が出来るかどうかで、
回答率も回答も違ってきているという例です。
なるほど!という感じですよね。 
年収や、地方行政の施策を検討した上での回答ではないので、
満足かどうかというのも主観的な判断だけだから、あまりアテになりませんが、
どんなに薄給でも、家が駅から遠かろうとも、福祉が充実してなくても、
満足♪と思って暮らしている人がご近所さんに多いほうが、
治安も良いだろうし、諍いも少ないだろうし、暮らしやすいでしょうね(笑)

ちなみに、平均貯蓄額というのも、あやしい。
こういうものは平均せず、データの散らばりを散布図で表したほうが
現実をよく捉えることが出来るそうです。
そこで導き出される“平均貯蓄額”についての結論は、
“日本人の多くは平均貯蓄額ほどの蓄えを持っておらず、ミキタニさんや
 ソンさんといった一部の億万長者の貯蓄額に引っ張られて、
 庶民の相場観より高い平均値となっているのである”(116ページ)


こうして様々な方法で集めたられた数値データが、人々の精神に影響を与え
世論操作に利用されてしまうのが、厭なんです。だからこの本のタイトルに
興味をひかれたわけですが、著者の危惧なさっている点も同じだと思います。

“具体的な数値目標を設定するケースは、官民問わず多い。
 本来は実現したい目的があって、それを達成するために目標が設定される。
 しかし、現実には数値で示された目標をなんとか達成しようとして、
 ありとあらゆる手法が使われる。結局、本来の目的がおざなりにされ、
 数値目標の達成という手段が目的化しがちである。”(158ページ)


数字の魔法に引っかからないよう気を付けましょう。


本★『外交敗北 日朝首脳会談と日米同盟の真実』
2007年02月14日 (水) | 編集 |
本★重村智計『外交敗北 日朝首脳会談と日米同盟の真実』(講談社)2006.6.29

北朝鮮核問題をめぐる六カ国協議は、6日目の2月13日午後に閉幕しました。
今まで、軍事力というのは、国土の大きさや国民の多さに比例していたのが、
見事に覆されたという気がします。
「核」という、ただ一つの存在が、大国が営々と築き上げてきた軍事力を凌ぐ。
核の持つ巨大な脅威を背景にした外交。それは、大国よりも、
周囲から危険視されている小国だから、出来ることなのでしょうが。
某国は、バランス感覚というか、各国の思惑が絡み合う外交の舵取りはうまいなぁ・・・。


著者は、小泉総理が北を訪問した時に、日米同盟が危機に瀕したことに言及。
重要なのは、この↓一点。

“核問題を棚上げにして、日朝正常化が実現すれば、日米同盟は崩壊する。
 同盟の最大の要素である「共通の敵」と「共通の価値観」が失われるからだ”
                        (39頁)

著者は、新聞に対して、
“政府の政策や計画を、発表前に報じることを「トクダネ」としてきた。
 これでは形を変えた官報である。そうではなく、そうした計画が
 国民や国家のためになるのかを検証する記事こそ「トクダネ」なのだ。”
                        (143頁)

インターネットで簡単に情報収集が出来る現在、新聞に求められるのは
正確さと、その情報が、どこにどのように影響するかを見抜く力なのですね。

国家の指導者としての立場に立った人間が直面する問題として、著者は、
ウェーバーを引用し、「心情倫理」と「責任倫理」を挙げています。

“マックス・ウェーバーが「職業としての政治」で、
 政治家が直面する最大の問題として「心情倫理」と「責任倫理」を指摘している。
 「心情倫理」とは、個人の信念や信仰などの動機を重要視する。
 靖国神社参拝は、心情倫理に従った行動である。
 「責任倫理」 とは、結果責任を意味する。中国や韓国との外交関係に
 影響が及ぶことを理由に、靖国参拝を中止するのは、責任倫理に従った行動である。
 心情倫理と責任倫理の衝突は、誰もが経験する問題である。
 会社のために談合をしなければならないビジネスマンは、この葛藤に
 苦悩したはずである。あるいは、会社のために官僚に賄賂を渡さざるを
 えない人もいるだろう”(215頁)

組織の論理と、個人の良心の葛藤ですね。
これはもう、社会で生活する限りはついてまわるのだと思う・・・。

本★『南極ってどんなところ?』
2007年02月12日 (月) | 編集 |
本★『南極ってどんなところ?
柴田哲治・中山由美・国立極地研究所(朝日新聞社)2005.04

南極に赴くのは、天体やら土地やらの学術的な研究者や、
「しらせ」の海自隊員だけではありません。
もっと身近な、耐寒衣服を販売しているアパレルメーカーの研究者や、
朝日新聞の女性記者もいらっしゃるということを知って、
憧れの南極は、わりと多くの人に手の届く存在なんだなぁと思いました。

合宿では、朝はラジオ体操とジョギングをして、それから環境保護や、
廃棄物処理、食料と装備、心と体の健康など、さまざまなテーマで講義があるそうです。
消火訓練、救急救命訓練・・・南極では、消防車も救急車も来てくれないから
そりゃ真剣になりますよね。

もっと専門的で、過酷な訓練もあります。
三陸海岸で大気球の打ち上げ、新潟県寺泊の野積海岸で雪上車の運転、
富士山登山、川崎で重機の訓練など。

“砕氷艦「しらせ」は毎年11月14日に東京・晴海埠頭を出航します。
 観測隊員たちは28日に成田空港からオーストラリアのパースへ飛んで、
 フリーマントル港で乗船します。「総員起こし!」朝一番、船内に響く放送で
 ベッドから這い出します。”(55頁)

「総員起こし!」の他にも、「配食始め」や「巡検」といった用語、
「ひとひとまるまる」という時刻の呼び方、金曜昼はカレーということまで、
何もかも海自式の航海なんだそうです!!!!う、羨ましい・・・!

南極では、娯楽映画やDVDの上映会や、バーの開設、それに、「南極大学」という
一人が30分ずつ、自分の専門分野の知識を披露する講義もあるそうです。楽しそう。

南極と言えば、ペンギン。
“ペンギンの体色は、ペンギンを海の生物と考えると納得できます。
 ペンギンが海に入ると、海上からはその黒い背中が保護色となり目立たないのです。
 一方、海の底からは、白い腹部が明るい海面を背景に、これもまた目立たなくなります”
                          (74頁)
なるほど、あの燕尾服のような体色には、そんな深い意味があったんですね。

さて、南極の紹介は、こちらでも見られます。。日刊スポーツさんのブログです。

本★『誇大自己症候群』
2007年02月11日 (日) | 編集 |
本★岡田尊司『誇大自己症候群』(ちくま新書)2005.9.10

ここ最近の一連の犯罪や、引きこもり、ニートといった社会問題を理解するのに、
とても興味深い書物でした。
N良女児誘拐殺害事件や、大教大付属池田小学校など実際に起こった事件を
取り上げて、分かりやすく解説されています。
ちょっと引用が長いんですが(でも本文はもっと多いから買って読んでください!)、
今一番問題になっている上に、この心の有り様は、誰にとっても
他人事ではないと思うのです。


まず、誇大自己症候群とは・・・

現実に不適応を引き起こすほどに肥大した万能感と他者に対する驕りを特徴とする、
この一連の症候群を、「誇大自己症候群」と呼ぶこととする”(31頁)

万能感と自己顕示性、唯一性が誇大自己の大きな特徴です。
これらは、子どもの頃なら全員が持っているもので、
例えば、将来はなりたいものになれると思っていたり、
親が妹や弟を可愛がると不機嫌になったりします。
特にひとりっ子の場合は、普段愛情を一心に注がれていることが多いので
そういう傾向が強いそうです・・・わたしもひとりっ子なんだけど。

しかし、この性格が全て一概に悪い、というわけではありません。
例えば、“ウィンストン・チャーチルは子供の頃に自分は飛ぶことができると信じて
橋からダイビングしたことがあった。”(45頁)
しかも“学校では劣等生で、政治家になってもパッとしなかった”けれども、
“ヒトラーと対峙してロンドン空襲という未曾有の危難に遭っても
 揺るぎない意志と自信で戦争を遂行し、やがて劣勢を跳ね返した”(46頁)
ように、何事かを為し遂げるためには必要なものでもあります。

ただ、それが、取り返しのつかない問題に至ることもある。
“体が小学校低学年並”なのに“ドラゴンボールZの悟空を尊敬していた”少年は、
自分よりずっと身体の大きい警察官を相手に、拳銃を奪えると考えたらしい。(47頁)
これなどは笑い話のようですが、ものが拳銃だけに、見過ごすわけにはいかないのでしょう。
警察官も、中学生相手に暴力を振るうのを躊躇していたら、不意を突かれないとも
限らないし。大体、警察官は、女性相手だと身体に触れるのを極端に厭がりますが
(セクハラ疑惑をかけられるのを恐れて)、そんな事を気にしていたら、
防げる犯罪も防げませんよ。酔っ払いの女性に悪口雑言を投げかけられ、
たまに叩かれたりしながらも、遠慮している警察官を実際に見たことがありますが、
(テレビの密着番組でもよくありますが)、気の毒になりました。

その他の症例。
“誰にも愛されず、誰からも振り返ってもらえなかった少年は、小さな小屋に
 火をつけた。人々が大騒ぎして集まってきたときの興奮が忘れられず、放火を繰り返した。
 援助交際に明け暮れた少女は、中年の男たちが自分の体に夢中になり、
 褒めそやされることが、手に入るお金以上に快感だったと打ち明けた”(49頁)


“ゴータマ・シッダルタは、誕生するとすぐに七歩歩み、「天上天下唯我独尊」と
 言ったという。この言葉は、誇大自己の唯一絶対性のもっとも端的な言明である。
 シッダルタ王子ならずとも、たいていの子どもは自分を世界の中心だと考えている。
 自分は特別に大切な存在だと思っている。そして大きくなるにつれ、
 自分は大勢の中の一人であり、それほど特別な存在でもなく、
 平凡に世界の片隅に生きているに過ぎないことを理解する。”
                          (51頁)

“誇大自己症候群が示すもう一つの特性は、他者に対する真の共感性が未発達であったり、
 失われていることである。ここで注意してほしいのは、必ずしも最初から未発達とは
 限らないことである。いったん発達を遂げていたのに、次第に興廃し、
 変質を来している例も少なくない。共感することを無意識に拒否している場合もある。
 感じることを拒み、クールでドライに振る舞うことで自分を守っているのだ。
 そうした傾向は、非行少年や犯罪者に限らず現代人一般に広く見られる
心のあり方なのである。”
                             (53頁)

“誇大自己症候群の特徴は、一方で他者に対する共感性を失いながら、別の部分では、
 過度に感傷的になり、深く感情移入を起こす一面をもつことである”(54頁)



殺人を犯したある少年が、被害者に捧げる曲を作ったことがある。中略
ある種感動的なその曲には、命を、未来を奪われたものへの視点ではなく、重い
罪を犯した報われない自分自身への陶酔が感じられた。罪を後悔しつつも、その
座標軸の中心が、あくまで彼にあるのを感じずにはいられなかった。54

“誇大自己症候群にみられるもう一つの特徴は、傷つきやすかであり、傷つきから
 誇大自己を守るために生じる二つの戦略、回避と攻撃が両極端に現れやすい”
                          (62頁)

“誇大自己症候群の若者は、現実的には機能低下に陥っているような場合も、
 高い理想や目標にこだわり続けている。成績はどんどん落ちていても、
 目標だけは以前と変わらず高いままだ”(63頁)

勿論、高い理想や目標を持つことが全て悪いわけじゃない。
でも現実的ではないし、独りよがりの場合もある。
これが、引きこもりやニートに繋がっていくんですね。

“万能感を傷つけられずにやっていく1番いい方法は、自室を小さな砦にして、
 自分の思いのままになる装置やファンタジーやペットに囲まれて、
 彼の言うことを聞いてくれる家族を召使いにし、不快な外界との接触は
 最小限にして暮らすことである。完全な引きこもりの若者だけでなく、
 社会で適応している若者や大人にも、こうしたライフスタイルは、
 程度の差はあれ浸透している”(63頁)

これはまあ・・・・・・他人事ではないです・・・・。
いちお仕事して納税しているとはいっても、それだけだからな~。
少子化少子化と言われると、結婚もせず出産もしていない、それに対する
努力を全く払っていない自分は、やっぱりダメなのだろうなぁ・・・。

“(意に沿わぬものを排除するという)そうした破壊性は相手に向かうこともあるが、
 ときには自分自身にも向かう。自己破壊という行為は、もっとも大切なものである
 はずの自分を破壊することによって、もっとも激しく万能感を示す。
 絶望や自己嫌悪を万能感的優越に換えるのである”(70頁)

去年、いじめによる自殺も多発しました。
自己破壊とは、どうしようもない時に取りうる手段として、非常に魅力的なのですよね。
つらい、苦しいと考えている自分がいなくなればいい。消えてなくなればすごくラク。
でも、みんなそういう誘惑に打ち勝って生きているんだよな・・・。

“突発的な凶悪事件を起こした子ども達に共通する傾向は、上昇志向がとても強い親が
 多く見られることである。(中略) 親の願望は、厭でも子どもにしわ寄せし、
 そうした子どもたちは、誰もがあっと驚く大きなことをしなければ、自分が
 無価値になってしまうという強迫観念に囚われている”(130頁)

それを克服するのには、どうすればいいか。
結局は、人との出会いであり、考え方の変更なんですね。

“誇大自己症候群を抱えた人にとって、師として尊敬できる人物に巡り会うことが、
 それを克服するための不可欠なプロセスである”(234頁)
“そうした理想化対象は、父親や母親代わりの存在であり、それまでに受けた養育や
 教育の偏りを修正し、その影響を脱するための中和過程でもある”(235頁)

“誇大自己症候群を抱えている人がそれを克服する道は、自分のためではなく、
 人のために生きることの喜びを知ることにある。
 誇大自己症候群のもっとも幸福な昇華は、人のために生きる喜びに目ざめ、
 そこに己を生かす場を見出だすことである”(242頁)

“徐々に成し遂げられることは、ある傷つきと偏りをもった存在である自分を知り、
 自分が向き合ってこなかった部分も含めて、すべてを自分として受け容れ直す
 ということである。自己の再認識と再統合という過程をくり返す中で、
 自分の中のさまざまな可能性に命が吹き込まれ、傷や歪みでしかなかったものも、
 現実的な力となっていく”(243頁)


現代人にとっては、全ての人に共通する心の問題だと思います。

本★五條瑛『エデン』
2006年10月21日 (土) | 編集 |
本★五條瑛『エデン』(文藝春秋)2006.8.10

今までの五條作品と、テイストは同じだけれど構成は異質。
主人公は、スラムで生まれストリートで育った亞宮柾人という青年。
ギャング同士の抗争で捕まって「K七号施設」(刑務所)に入る。
ただしこの施設は、政治・思想犯専用の、特別矯正施設。
亞宮にとっては全く理解できないインテリばかりが生活する空間で、
他の大多数の収容者とは違う信条を持って、強く逞しく生きていく姿が際だっている。

思想犯特有の、眉間にシワを寄せ肩肘張って、頭の中で考えただけで
融通のきかない自分の主張を声高に叫ぶ連中よりは、
瞬時に状況判断できる亞宮の頭の良さや、仲間との絆の強さは魅力的です。

亞宮は、かっこいい。収容者仲間の工藤に
「きっとお前は、自分の居場所が見つからなくて不安になるなんてことは、
 ないんだろうな」(362頁)と言われてしまうくらい、強い。

亞宮の言葉↓
「俺たちストリートの人間は、基本的にはいつだって一人だ。
 甘っちょろい政治犯みたいに、生きるのも死ぬのも一緒なんて考えはないんだよ」

矯正施設側の佐々木ドクターは
「確かに、彼らには甘いところがずいぶんあるな。それは僕らもだ。
 もともと思想というのは、弱き自分を認識するところから始まったものだと思う。
 弱いからこそ、何かにすがることで強さを得ようと思うんだろう。
 だがね、亜宮君」「人間というものは、たいていそうなんだ。
 ときには弱くて甘いのが一般的で、珍しいことじゃない。政治でも宗教でもいい。
 何かに負けてしまいそうな人間が精神的な支えを欲するのは、本能みたいなものだ」
                        (358頁)


その施設では、刑務所とは思えないほど収容者が優遇されていますが、
人々の不安や不満は渦を巻き、飽和状態になっていきます。
そろそろ臨界点に達する頃かと見た北所長が、亞宮を入所させたんでしょうか。

そこで数年前の日比谷暴動(これは史実の日比谷焼き打ち事件とは別)が
絡んできます。宇賀神という暴動の中心人物に対して、亞宮も興味を持つ。

風船の中に空気を吹き込んでいき、飽和状態になり、パーン!とはじける、
何か暴動が起こる時の感覚とはそういうものでしょうか。
人がいて、気という熱が上昇し、爆発を起こし、誰か誘導する者がいれば
一定の方向へ目的を持って向かう。
うまくいけば、革命。

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