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映画★「イン・ディス・ワールド」
2005年08月14日 (日) | 編集 |
映画★「イン・ディス・ワールド

(重要なネタバレと思うところは、白字にしています。
 御覧頂く場合は、カーソルを合わせてください)

レンタルショップに行くと「アレキサンダー」も「ネバーランド」も全部貸出中で、
じゃあ仕方ないか・・・という感じで手に取っただけなのに、すごく良かった。
監督インタビューとか、コメントまでじっくり見てしまいました。

イギリス映画です。
映画の主役は2人、アフガニスタン人の少年ジャマールと、青年(中年?)エナヤット。
パキスタンの難民キャンプで暮らす彼らが、
ロンドンへ亡命を企てる、その旅の道中を描いています。

フィクションですが、監督と脚本家がイギリスやフランスにいる亡命者を直接取材し、
その体験談を基にしてシナリオを作ったものなので、非情にリアル。
ドキュメンタリー仕立てになっています。
出演者も、実際の職業を演じていて、主役2人も、
ペシャワールの難民キャンプから選ばれた素人。
エナヤットは、演技がどうという以前に、映画が何かも
分かっていなかったそうですが、その愛すべき人柄で選ばれました。
パシュトゥン語しか話せない大人の男性と、英語を話す少年にしたのは、
結果的には、とても良い人選だったと思います。
年端のいかない少年が通訳では、密航のための交渉もスムーズには進まず、
不安になったり苛立ったりする雰囲気が、よく出ていました。

映画に出てくる密航業者も本物で、実際に主役2人の不法入国の手引きをしています。
イランの検問所のシーンでは、撮影許可を願い出ると、
本物の司令官が、“俺が出るなら”という条件で、許可してくれたそうです。

彼らと共に旅をしている気分になっている上、
あまりにもリアルなので、軍人の 迷彩服が恐い んです。
日本でも米軍の服を着ている人はよくいますが、そんな感じでは全くなく。
有刺鉄線が張り巡らされた場所で、銃口がこちらに向けられ、
感情の読めない顔で、軍人が近づいてくる。
殺されるのか、通してくれるのか、戻されるのか、それすら分からない。
ものすごい威圧感があります。怯えます。無力感に苛まれる。
簡単な賄賂で、見過ごされたりもするんですが、
でも彼らの機嫌次第では、どうなるか見当もつかない。撃ち殺されても文句は言えない。

あの迷彩服に本当の恐怖を感じる人も現実にいるのだということ、
日本はそういう世界から遠くなっているんだということを実感しました・・・。

夜の闇に紛れて国境の山越えをするシーンは、大迫力です。
喘息の発作の前のような荒い息づかい、
恐怖、
警備隊、
銃声
一緒にいた誰かが見つかったのか、撃たれたのか、死んだのか、
何も分からない。ただ闇雲に走って逃げる。

その後、船でヨーロッパへ渡るシーンが印象的でした。
40時間以上も、手足も伸ばせないような狭く暗い場所に、数人が閉じ込められる。
食事はもちろんトイレもない、換気はできず、暑いだろう・・・。
大声で叫んでも、返事はなく、外に出してはもらえない。
考えただけで息が詰まります。
そこで大人たちは衰弱、死んでしまいます。
少年は1人でイタリアの地を踏みます。
いちお保護者代わりだったエナヤットは、いなくなってしまった。
生きるために窃盗をする。

そんな状況下でも、少年は笑い話をして場を和ませる。
ようやくの思いでロンドンに辿り着いても、そこでもまた警察に怯える生活。

現在、主役を演じたジャマールは、現実に本当に亡命してしまって、
ロンドンで暮らしていますが、これは特例措置であって、
彼が18歳になった暁には、強制的な国外退去が待っています。


映画の撮影は、9.11のテロ直後だったそうで、
ビンラディンの写真がプリントされたTシャツを売りに来られた時は
本当に恐い思いをした、と監督がおっしゃってました。

路上では観光客を気取り、
特にトルコでは、シルクロードの撮影がしたいんだと言っても
撮影許可が下りなかったそうな。

しかし一番厳しい扱いを受けたのがフランスだそうです。
難民を集めたら、周辺住民から抗議が出たのだそうで・・・
そりゃ時期が時期だし、その気持ちは分からないでもありません。

そもそも、監督がこの映画を撮る動機になったのが、
ヨーロッパの排他性
家族や友人、文化を捨ててまで、ヨーロッパでの生活に憧れて
亡命してくる難民たちを、受け入れようとしない。

ジャマールの場合は、アフガン人とはいうものの、
パキスタンで生まれパキスタンで育った、生え抜きの?難民。
とはいえ、パキスタンも彼を正式には拒否し、イギリスも彼を拒否した。
本当にもう、こういうのはどうしていいのか・・・。
彼のいたペシャワールでは、100万人ものアフガン難民が生活していて、
貧しいけれど仕事もないので、何もすることがない。
見渡す限り褐色の大地で、サッカーをやっている。
延々とサッカーばっかりやっている。

日本では、部屋に引きこもっていても、孤独になることはないんですね。
退屈することがない。それだけのモノに溢れているから。
もう全く違う世界。

視界を遮るもののない荒野では、
冠雪を頂いた山、稲妻が走る様子など、大自然が迫ってきます。
空が広いことは、日本では呼吸が楽になるような、気持ちのいいものですが、
ここではむしろ空が地を抑圧するような、不気味さと威圧感が。
主役2人の心情を表現しているかのように、自然も2人に牙を剥いていました。

「マーチ・オブ・ザ・ペンギン(皇帝ペンギン)」みたいに苦しい旅。
しかし、ここでは本当の敵は自然ではなくて、同種族の人間なんですよね・・・。
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