高村薫さん・五條瑛さん・福井晴敏さん・古処誠二さん等の小説、海外の海洋小説、歴史、B'z、を糧に生きている人間の日常。
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「カワイイ、アナタ」への返信
2006年03月22日 (水) | 編集 |
「文藝春秋」4月号に掲載された高村薫さんの「カワイイ、アナタ」が
ある人物からある人物に向けての書簡という形になっている為に、
読んだ直後から、その返信が気になっていました。
あんな手紙を貰った件の男性は、どういう気分になるだろうか、とか。
返信を書くんだろうか、書くならどんな手紙になるんだろうか、と。
で。
出来心です。書いてしまいました。笑って許してください・・・。
・・・いや本当なら、もっとマジメに書くと思います、彼は(笑)
雄一郎殿

拝啓 多忙すぎて人間をやめているのだろうとは、何という言いぐさだろうか。
日々雑事に埋もれ心身疲労の極みにあるのは君と同じだが、あのような手紙を
受け取ることになった小生の心の内も、少しは察して欲しいものだ。
君が、追っている被疑者に心を砕くのと同等には、
こちらにも心をかけてほしいと、切に願っている。

ではこちらも、あまり笑えない夜話を一つ、書き送る。
これは、10年ほど前に、ある人から聞いた話だ。
その人は君の身近にいた人物だが、小生は特に深い付き合いがあったわけではない。

君がナイフで刺されて重傷を負い、生死の境を彷徨っていた時のことだった。
六時間に及ぶ手術で一命を取りとめたものの、小生の激しい怒りはおさまらなかった。
“辛いことが辛くなくなることはない。自分の腹に収める場所を見つけるだけだ----”
常にそうしてきたが、今回こそは、激しい感情のおさめどころが見つからなかった。
当時、特捜部が起訴に踏み切った日之出麦酒の捜査は佳境に入っていたが、
小生が取り調べを抛って姿を消してしまったせいで、暗礁に乗り上げていた。
そこへ、速やかな収束を願う組織の、どこかからどこかへ話が伝わり、
件の人物が、真っ暗な部屋で壁と対峙し一人放心していた小生の元に現れたのだ。

実は、ここ数ヶ月、一人の人間の行確をしていた----と、その人物は語り出した。
行確対象は、三十代半ばの男性。短い髪、鋭く複雑な陰影のある目。
始発に乗って職場に向かい、夜遅くまで仕事をした後も疲れは見せず、
駅から自転車で帰宅。
しばらくするとヴァイオリンケースを手に家を出て、マンションの下の公園に行き、
いつもの場所に腰を下ろすと、生真面目に教則本を開いて、おもむろに弾き始める。
オクターブ奏法や、スプリング・ボウ・アルペジオの練習をしながらも、
公園を横切ってゆく人影があれば、すぐさま目を向け、人物を確認した後は
落胆をにじませて考え込み、ヴァイオリンの音色は、ますます切なくなってゆく----。

雄一郎、君の手紙で感想を問われたから言うのだが、
小生が君の手紙を読んだ時に感じたのは、夜の公園のヴァイオリン弾きも、
その時『カワイイ、アナタ』を飼っていたのではないか、ということだ。
小生の推測は間違っているだろうか。
希望的観測だと、君は一笑に付してしまうだろうか。

人生の道半ばで小生が暗い森に迷い込んだのは、
目の前に現れた『カワイイ、アナタ』が走り去った、その後ろ姿を
追いかけ、追い求めた結果だったのだろう。

さて、小生の棺には、白いズックを納めようか・・・・

                   敬具 
                          加納祐介
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コメント
この記事へのコメント
「恋文」
こんばんは。
あぁ~~、すごい「恋文」だなぁ・・・
2人は、あのイブからどういう関係になって、現在に至っているのでしょうね。
義弟があんな「イタイ、ラブレター」を書いて、義兄がこんな「激しい恋文」を返信したら・・・ でも、絶対ににお互いが「カワイイ、アナタ」だって事ずっと前から気付いていますよね。
例の「カワイイ、アナタ」を読んだ時、本当は少しホッとしました。いろいろあって2人が決別していたら、第3部は読みたくないなぁ~~って思っていたので。 
とにかく何でもいいから、ジジイになってもラブラブやっててくださいよ!!
それから、10年前加納にチクッたのは平瀬ですよね?
やっぱり平瀬にもバレバレだったんだな~。
落胆をにじませ、切なくヴァイオリンを弾く合田みたかった!!! 悶え死ぬよ~~~!!!
ちなみに、合田はお棺に“台ふき”か“アイロン”ですかねぇ。(チョッとイヤ)
2006/03/23(木) 00:58:42 | URL | GARU #-[ 編集]
すすすみません
こんな出来心に付き合ってくださってお読みくださり、有り難うございます~~~。
はい、チクりは平瀬です☆
合田宅にいる加納の居留守に気付いてましたよね、彼は。
第3部の加納は、どういう位置にいるんでしょう?気になりますね!
東京から離れているのかな・・・。遠距離かな・・・!
わたしも合田を「カワイイ、アナタ」と思ったせいで
暗い森に迷い込んだ挙げ句、きっと棺には
『レディ・ジョーカー』を入れてもらうんだろうなぁ(笑)
2006/03/23(木) 01:10:52 | URL | みなわ(管理人) #eWQc6sqc[ 編集]
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