高村薫さん・五條瑛さん・福井晴敏さん・古処誠二さん等の小説、海外の海洋小説、歴史、B'z、を糧に生きている人間の日常。
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本★中川一徳『メディアの支配者 上・下』
2006年03月29日 (水) | 編集 |
本★中川一徳『メディアの支配者 上・下』(講談社)2005.6.30

去年、ライブドアがニッポン放送株買収に乗り出してフジテレビと対立、
騒然となるまで、フジサンケイグループについて全く知識がありませんでした。
こんな大企業が世襲制というのも、全く考えられなかった。

この本では、一大メディアグループを立ち上げ成長させた鹿内信隆氏と、
彼亡き後の鹿内家と、会社役員との軋轢を描いています。

まずは、鹿内信隆氏のプロフィールを。
“昭和18年8月1日、信隆は主計中尉を最後に陸軍を除隊する。
 信隆が後に勲一等を受章する際に提出した履歴書によれば、
 2日付で三徳工業に復職したが、1ヶ月後の9月4日に退職、
 続いて10月1日には日本電子工業という会社の創立に参画し、
 32歳の若さで取締役企画部長の役職に就いたとある。
 日本電子工業は、陸軍と日産の総帥・鮎川義介をはじめとする
 満州人脈の主導でつくられた「国策会社」だからである”(上巻261頁)

戦中戦後のどさくさに陸軍と満州まで絡むいかがわしさ
興味深いところです(笑)

信隆氏は確かに辣腕家だったようですが、
「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」という信長風の経営者だった模様。

“以前から新聞社の幹部を切る信隆の手法は
 遠火でじりじりと焼くように始まるのだという。
 役員会で「君はよくそこに座っていられるな」
 「辞表を書いてすぐ持ってきて下さい」などと
 唐突に言い渡すことがあった。
 「『インテリにいちばん効くのは、大勢の前で辱めることだ』
 というのが鹿内さんの得意の台詞だった」”(下巻127頁)

信隆氏は長男の鹿内春雄氏に、グループ最高責任者であるところの議長職を譲る。
この春雄氏にも経営の才能があり、ちょうどバブル期だったこともあって、
グループ特にフジテレビは急成長。押しも押されもしない業界トップに躍り出る。
目玉マークが採用されたのも、お台場にグループの拠点を作る構想が固まったのも
この春雄氏の時だった。
わたしの周囲も「何もなければフジテレビにチャンネルを合わせている」と言う人が多い。

世襲とはいえ実力のある2代目春雄氏だったけれど、議長を継いで僅か3年で急逝。
再びカリスマの信隆氏が登場し、娘婿だった宏明氏を後継者に任命した。
宏明氏は興銀出身で、それまでは姓も違う。
それを養子縁組の末に鹿内姓を継がせ、
メディアとは全く畑違いの銀行から引き抜くのだから、
それまでの役員、特に、歴史の浅いテレビ会社にとって、ようやく
新卒入社組が役員世代になってきた今、彼らが鼻白んでしまうのも当然か・・・。

そこで現在の代表取締役会長である日枝久氏らが中心となって宏明氏を解雇、
泥沼の交代劇を見せ、そこをライブドアの堀江氏にも皮肉られる有り様となった。
まぁその堀江氏も今は地検特捜部に追われる身ですが。

宏明氏は確かに余所から来たことで煙たがられましたが、
無能だったわけではなく、業界内の慣習を無視したことなどが、
軋轢の大きくなった原因かも知れません。知的で潔癖な印象を受けます。


大枠はそういうトップ争いなんですが、語られるエピソードがすごいです。
信隆氏の妻であった女性は、何億という遺産相続をした孫が
“「狙撃される」と心配し窓をすべて防弾ガラスに張り替えさせ、
 あるいは「さらわれるかもしれない」と遊び盛りの孫に
 一歩たりとも外に出ることを禁じた。”(上巻50頁)
“少年は、それから4年半にわたって、小学校に通うことばかりか
 建物の外に出ることも封じられることになる。”(上巻50頁)

すごいですよね、篠田真由美氏の建築探偵の蒼みたいじゃないですか・・・。
小説の中だけの話だと思っていた・・・
上流階級の常識の違いに唖然とさせられます。
そりゃ心配だろうけど。彼の今後の人生も心配だ。

鹿内家はバブル期の日本企業のドンらしく美術関係にも
いろいろ手を出しているのですが、その費用たるや。

“MoMA展に合わせ上野の森美術館の改修費にざっと12億5千万円、
 展示一回あたり4億円の赤字が見込まれ”(上巻208頁)

そんな大赤字を出してまで、展覧会をする意義はどこにあるかというと、

“MoMA展の「効用」、つまりアメリカ中枢部の大財閥と関係を結ぶことの
 「理と利」をクーデター派も認識したからに違いない。”(上巻208頁)
(※クーデター派とは、宏明氏をグループから追い出した側の社員のこと。)

そういう人間関係は、どんどん波及する。マスコミであれ、
いやマスコミであるからこそか、大企業のトップと政治家は付き合いがある。

“信隆は宏明にグループを継承した際に、
 政界ではまっさきに竹下を引き合わせている。
 竹下は三年前にリクルート事件で退陣したとはいえ、
 自民党最大派閥を率い、なおも政界に隠然たる力を持っていた。
 宏明にとっては政界における“後見人”といってよい存在だった。
 小沢一郎、小渕恵三といった当時の竹下派の主要な幹部に
 宏明を引き合わせたのも竹下だ。”(上巻141頁)

面白かったのは、『壁文藝』と呼ばれた、「メトロペンクラブ」。

“三ツ村が次に目を付けたのは地下鉄駅の壁である。
 乗客から詩、俳句、短歌を募集して僕や文芸仲間が選者になり、
 当選した作品を壁に張り出し賞品に回数券を出すようにしたら
 意外と評判になった。”(上巻311頁)


それから税金。

“七千万円を超える現金贈与は課税率70%の高率が課せられる。
 1億5500万円の贈与となれば、実に1億円を超える贈与税の
 支払い義務が信隆に生じるのだ。”(下巻183頁)

贈与税なんて関係ないような家なので気にしていませんでしたが、
お金持ちはこんなに税金がかかるんだ!と驚きました。

しかし税金逃れの法対策も考えていないわけじゃない。

“「国税庁出身の顧問税理士から、Aという流通グループが
 現物出資会社を作っていると聞き、そういう手があるのかと・・・・・・。
 それで法人税法五十一条を調べた」
 親会社が土地などを現物出資して子会社を作る場合に、事実上、
 簿価で譲渡でき、課税されずに済むという規定だ。
 これをひと捻りすると、まったく新しい会社支配の仕組みが誕生する”
                  (下巻141頁)

それでも払う時は払います。

“04年1月、ニッポン放送に対して、保有するフジテレビ株を
 吐き出すように圧力をかけ、フジテレビと共同で貸しスタジオを作るための
 原資として三百億円のフジテレビ株を売却させ、シェアを22.5%へと落とした。
 そのうち百十億円は税金として徴収されている。”

あの、これだけ税金を取っておいて、まだ足りないのか政府よ・・・
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