高村薫さん・五條瑛さん・福井晴敏さん・古処誠二さん等の小説、海外の海洋小説、歴史、B'z、を糧に生きている人間の日常。
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本★佐藤優『自壊する帝国』
2006年07月22日 (土) | 編集 |
本★佐藤優『自壊する帝国』(新潮社)2006.5.30

国家が崩壊する時に、人はどう生きるのか。
ある者は、真摯に国家と国民の在り方を考えて、理想のために奔走し、
ある者は、保身に走り、変節し、その時々の権力におもねる。
保守、革新、どちらが善でどちらが悪というわけでもなく、
崩壊という現実を前に、ただ2種類の人間がいるというだけです。
最終的に、そのバランスをうまく取って生き残る人物もいますが。
それを見せてくれるのが、本書です。

『自壊する帝国』は、著者が在ソ連日本大使館の外交官として渦中にいて、
自分の目で見、関係者から直接に話を聞いた、崩壊の一部始終を記録したものです。

1991年にソ連が崩壊し、ロシアとその他の小さな国々に解体されたのは
ニュースで派手に報道されたものの、その当時のわたしといえば、
B'zの5枚目のアルバム「IN THE LIFE」を熱心に聴いているくらいで
さほど社会情勢を気にするでもなく、反抗期のまっただ中でした(笑)

巨大な帝国だったソ連(ソビエト社会主義共和国連邦)は、
現在、15カ国に分かれています。
ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ、カザフスタン、ウズベキスタン、
トルクメニスタン、キルギス、タジキスタン、グルジア、アルメニア、
アゼルバイジャン、エストニア、ラトビア、リトアニア。
これだけの国が一つの国家としてまとまっていたというのが驚きなんですが。
ロシアとなった今も国土は非常に大きい。面積は世界1位を誇る。
外務省のHPでの紹介によると、日本の45倍、米国の2倍近くだそうです。

著者に影響を与えた人物にサーシャという男性がいます。
アレクサンドルの愛称がサーシャなのだそうです。
彼は、五條瑛さんの革命シリーズのサーシャと、高村薫さんの『李歐』の李歐を
彷彿とさせる魅惑的な人物です。煽動家というのか、人々を強烈に魅きつける
個性を持っています。時代の転換期には、人に夢を見せる、こういった人物が
必ず出てくるように思います。一瞬だけ激しく眩しく輝くんですね。

著者がソ連の地で活躍できたのは、それまでに培っていたキリスト教の知識や
今ないがしろにされつつある「教養」と呼ばれるものの力だろうと思います。
同志社大学大学院神学研究科で彼が履修したのはチェコ神学という
俗世には何の役にも立たないと一笑に付されてしまうようなテーマなのですが
(わたしも学生時代『万葉集』を大切に抱えていて笑われたことが・・・)
そこで深く思索したからこそ、彼は人々の懐に飛び込んで対話することが
できたのだと思います。ただ受験のための勉強に終始してきた人間が、
外国人と、深いところで「国とは何か」を論じることなんてできないでしょう。


ソ連のある人物が、イラク、新ユーゴ、北朝鮮との外交を担当していて、
なぜそのような国との外交をしているのかと問いただした著者に対して、

“「マサル、隙間産業だよ。外交だってビジネスだ。対米協調を基本にする
  エリツィンが取り組めない諸国との関係をわれわれが担当するんだ。
  補完外交だよ」”(317頁)

という文章に、唸りました。日頃から付き合いがないと、大事なときに対話もできない。
完全に交渉を絶ってしまうのではなく、細々とでも続けておけば、必要なときに
それが活きてくるだろうなぁと思います。そういう外交は表には出せないのだろうけど、
裏で策動する人物がいるんですね。

ソ連を守ろうと動いた人物が、理由を述べる箇所があります。
“孤児である自分をここまで育ててくれたソビエト政権には心から感謝しているから”
                            (263頁)

この言葉は素朴で、それだけに心を打ちます。
最近日本では、育ててくれた親にも感謝しない子どもが増えているように思えます。
阿漕な商売や、株の操作、もしくは社会保障を利用して、取れるだけの
お金をむしり取ろうという行為は「卑怯」だと思う。
リストラで従業員数を減らし、賃金を抑えるのが、賢い経営者なんだろうか。
責任を転嫁し、文句を言うだけで、仕事には手を抜く従業員も勿論いるだろう。
確かに、そういうことは法律に違反するわけじゃない。
でも、そうすることによって、住みにくい世の中を、自分で作っている気がするのです。
息苦しい世界を。見たくない世界を。そうして国は内部から崩壊するのだと思います。
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