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本★『誇大自己症候群』
2007年02月11日 (日) | 編集 |
本★岡田尊司『誇大自己症候群』(ちくま新書)2005.9.10

ここ最近の一連の犯罪や、引きこもり、ニートといった社会問題を理解するのに、
とても興味深い書物でした。
N良女児誘拐殺害事件や、大教大付属池田小学校など実際に起こった事件を
取り上げて、分かりやすく解説されています。
ちょっと引用が長いんですが(でも本文はもっと多いから買って読んでください!)、
今一番問題になっている上に、この心の有り様は、誰にとっても
他人事ではないと思うのです。


まず、誇大自己症候群とは・・・

現実に不適応を引き起こすほどに肥大した万能感と他者に対する驕りを特徴とする、
この一連の症候群を、「誇大自己症候群」と呼ぶこととする”(31頁)

万能感と自己顕示性、唯一性が誇大自己の大きな特徴です。
これらは、子どもの頃なら全員が持っているもので、
例えば、将来はなりたいものになれると思っていたり、
親が妹や弟を可愛がると不機嫌になったりします。
特にひとりっ子の場合は、普段愛情を一心に注がれていることが多いので
そういう傾向が強いそうです・・・わたしもひとりっ子なんだけど。

しかし、この性格が全て一概に悪い、というわけではありません。
例えば、“ウィンストン・チャーチルは子供の頃に自分は飛ぶことができると信じて
橋からダイビングしたことがあった。”(45頁)
しかも“学校では劣等生で、政治家になってもパッとしなかった”けれども、
“ヒトラーと対峙してロンドン空襲という未曾有の危難に遭っても
 揺るぎない意志と自信で戦争を遂行し、やがて劣勢を跳ね返した”(46頁)
ように、何事かを為し遂げるためには必要なものでもあります。

ただ、それが、取り返しのつかない問題に至ることもある。
“体が小学校低学年並”なのに“ドラゴンボールZの悟空を尊敬していた”少年は、
自分よりずっと身体の大きい警察官を相手に、拳銃を奪えると考えたらしい。(47頁)
これなどは笑い話のようですが、ものが拳銃だけに、見過ごすわけにはいかないのでしょう。
警察官も、中学生相手に暴力を振るうのを躊躇していたら、不意を突かれないとも
限らないし。大体、警察官は、女性相手だと身体に触れるのを極端に厭がりますが
(セクハラ疑惑をかけられるのを恐れて)、そんな事を気にしていたら、
防げる犯罪も防げませんよ。酔っ払いの女性に悪口雑言を投げかけられ、
たまに叩かれたりしながらも、遠慮している警察官を実際に見たことがありますが、
(テレビの密着番組でもよくありますが)、気の毒になりました。

その他の症例。
“誰にも愛されず、誰からも振り返ってもらえなかった少年は、小さな小屋に
 火をつけた。人々が大騒ぎして集まってきたときの興奮が忘れられず、放火を繰り返した。
 援助交際に明け暮れた少女は、中年の男たちが自分の体に夢中になり、
 褒めそやされることが、手に入るお金以上に快感だったと打ち明けた”(49頁)


“ゴータマ・シッダルタは、誕生するとすぐに七歩歩み、「天上天下唯我独尊」と
 言ったという。この言葉は、誇大自己の唯一絶対性のもっとも端的な言明である。
 シッダルタ王子ならずとも、たいていの子どもは自分を世界の中心だと考えている。
 自分は特別に大切な存在だと思っている。そして大きくなるにつれ、
 自分は大勢の中の一人であり、それほど特別な存在でもなく、
 平凡に世界の片隅に生きているに過ぎないことを理解する。”
                          (51頁)

“誇大自己症候群が示すもう一つの特性は、他者に対する真の共感性が未発達であったり、
 失われていることである。ここで注意してほしいのは、必ずしも最初から未発達とは
 限らないことである。いったん発達を遂げていたのに、次第に興廃し、
 変質を来している例も少なくない。共感することを無意識に拒否している場合もある。
 感じることを拒み、クールでドライに振る舞うことで自分を守っているのだ。
 そうした傾向は、非行少年や犯罪者に限らず現代人一般に広く見られる
心のあり方なのである。”
                             (53頁)

“誇大自己症候群の特徴は、一方で他者に対する共感性を失いながら、別の部分では、
 過度に感傷的になり、深く感情移入を起こす一面をもつことである”(54頁)



殺人を犯したある少年が、被害者に捧げる曲を作ったことがある。中略
ある種感動的なその曲には、命を、未来を奪われたものへの視点ではなく、重い
罪を犯した報われない自分自身への陶酔が感じられた。罪を後悔しつつも、その
座標軸の中心が、あくまで彼にあるのを感じずにはいられなかった。54

“誇大自己症候群にみられるもう一つの特徴は、傷つきやすかであり、傷つきから
 誇大自己を守るために生じる二つの戦略、回避と攻撃が両極端に現れやすい”
                          (62頁)

“誇大自己症候群の若者は、現実的には機能低下に陥っているような場合も、
 高い理想や目標にこだわり続けている。成績はどんどん落ちていても、
 目標だけは以前と変わらず高いままだ”(63頁)

勿論、高い理想や目標を持つことが全て悪いわけじゃない。
でも現実的ではないし、独りよがりの場合もある。
これが、引きこもりやニートに繋がっていくんですね。

“万能感を傷つけられずにやっていく1番いい方法は、自室を小さな砦にして、
 自分の思いのままになる装置やファンタジーやペットに囲まれて、
 彼の言うことを聞いてくれる家族を召使いにし、不快な外界との接触は
 最小限にして暮らすことである。完全な引きこもりの若者だけでなく、
 社会で適応している若者や大人にも、こうしたライフスタイルは、
 程度の差はあれ浸透している”(63頁)

これはまあ・・・・・・他人事ではないです・・・・。
いちお仕事して納税しているとはいっても、それだけだからな~。
少子化少子化と言われると、結婚もせず出産もしていない、それに対する
努力を全く払っていない自分は、やっぱりダメなのだろうなぁ・・・。

“(意に沿わぬものを排除するという)そうした破壊性は相手に向かうこともあるが、
 ときには自分自身にも向かう。自己破壊という行為は、もっとも大切なものである
 はずの自分を破壊することによって、もっとも激しく万能感を示す。
 絶望や自己嫌悪を万能感的優越に換えるのである”(70頁)

去年、いじめによる自殺も多発しました。
自己破壊とは、どうしようもない時に取りうる手段として、非常に魅力的なのですよね。
つらい、苦しいと考えている自分がいなくなればいい。消えてなくなればすごくラク。
でも、みんなそういう誘惑に打ち勝って生きているんだよな・・・。

“突発的な凶悪事件を起こした子ども達に共通する傾向は、上昇志向がとても強い親が
 多く見られることである。(中略) 親の願望は、厭でも子どもにしわ寄せし、
 そうした子どもたちは、誰もがあっと驚く大きなことをしなければ、自分が
 無価値になってしまうという強迫観念に囚われている”(130頁)

それを克服するのには、どうすればいいか。
結局は、人との出会いであり、考え方の変更なんですね。

“誇大自己症候群を抱えた人にとって、師として尊敬できる人物に巡り会うことが、
 それを克服するための不可欠なプロセスである”(234頁)
“そうした理想化対象は、父親や母親代わりの存在であり、それまでに受けた養育や
 教育の偏りを修正し、その影響を脱するための中和過程でもある”(235頁)

“誇大自己症候群を抱えている人がそれを克服する道は、自分のためではなく、
 人のために生きることの喜びを知ることにある。
 誇大自己症候群のもっとも幸福な昇華は、人のために生きる喜びに目ざめ、
 そこに己を生かす場を見出だすことである”(242頁)

“徐々に成し遂げられることは、ある傷つきと偏りをもった存在である自分を知り、
 自分が向き合ってこなかった部分も含めて、すべてを自分として受け容れ直す
 ということである。自己の再認識と再統合という過程をくり返す中で、
 自分の中のさまざまな可能性に命が吹き込まれ、傷や歪みでしかなかったものも、
 現実的な力となっていく”(243頁)


現代人にとっては、全ての人に共通する心の問題だと思います。
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